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傍若無人の独り言 [短歌もどき]

 ☆まったくの『ただごと』を五七五七七の定型にしただけなのですが、今吐いておかないと無常ということで流してしまいそうなので、あえて掲載します。



誰も見ぬ誰も知らないことでいい ひとりで決める自分のルール


一日の断酒のために来てるのにどこで飲むかと聞くアホな奴


雑談じゃ元気いいのにホンちゃんのミーティングでは口つぐむ人


共感がどこにあるのか 飲むことをやめたい人を唆してる


ほんとうに依存症かと疑うぞ否認どころか場違いな人


誰かれの消息ばかり口にする情報集め何をしたいの


ご自分の体調いかがと尋ねられわからないとは それがわからん



※ 槍玉に挙げたこの人は実在の人物です。以前、話すのを耳に挟みました・・・曰く・・「デイケアに出席していると証明できれば、医療保険金が月に15万円振り込まれる・・あなた知ってる?」・・と。心のうちで「どんなんや!」とその時は聞き捨てにしていたわけだが、実際、二~三週間も休んでいるなあと思っていたら ふいに出席する。診察日や外来で点滴だけを受けて院内をぶらついてる日もあるので、月のうち10日の受診とか15日とかの縛りがあるのかもしれない。兄さんが他市で事業をしているらしくその人が掛け金を払っているのかもしれないが、本人の様子からして働いた経験などないような印象なのです。平日、繁華街で見かけることが多くて誰にでも気軽に声をかけている。どこかブラックの臭いがする。

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現代短歌は乾ききっているというのか [短歌]

 ☆ たとえば目の前を飛び遊んでいる小蠅一匹をどういうふうに歌に詠みこむか・・大上段に振りかぶることなくいかに対象化するか~そんなことにおもしろさを感じてしまいます。小さいと言ってしまえばそれまでですが、小蠅の複眼で見る世界も面白いと思います。餌もないだろうにどうやって生き延びているんだろうとか考えてしまうのです。



悲しみを己愛の海に帰すときさゞなみさえも津波となって


ひそやかなときめきさえも弓なりに曲がる光の電気信号


生きるためわたくしごとのただうたを みそひとおとにのせて吐きだす


露出して だからどうなの百億の戦後万葉いまも彷徨う


左翼的ステロタイプに掬われる戦争うたなど私は詠まぬ


ひとくれの散文論じゃ癒されぬ 調べと響きわが胸にあり


疑問から始めよ両の手のひらに物差しいくつ世界を見よう


花ざぼん凍らせようか論戦の果てに奇妙なこの安堵感


甘い夢いざなう波の引き満ちるときの泡沫(うたかた) 星の営み


流れ星スッとどこかへ消えてゆく歌の墓場はいずくにありや

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転載 10. [川柳について]

 短歌の対極にあるのが川柳だと考えています。乾愁を装いつつ深淵の底には人間の喜怒哀楽の澱のような熱水の噴出口をひそかに持っていると思っています。手前みそで申し訳ありませんが、番傘の岸本水府をご存じでしょうか?平易な表現を心がけていかないと川柳も死んでしまいます。サラリーマン川柳やボヤキ川柳が現代川柳と思われるのは心外です。水府は仕事としてキャッチコピーを生業にしていました。川柳作品は彼の本音なのです。戦時中の反骨の川柳家 鶴彬(獄死)を素晴らしいと思うとともに水府とは状況が違うと思います。川柳はアジテーションの道具ではない。現代の状況が戦前に通じるというなら、鶴のような句をつくらないといけないと思います。単なる日常の延長のような散文句に安住しているのが大方ではないでしょうか。素人だからそれでいいとは思いません。瞬発的な時事詠では、時間経過とともに文脈を喪失し、花火同然なのです。やはり作家としての矜持と研鑽は必要条件だと思います。単に短歌が高尚で川柳が低劣でありましょうか? ベクトルが違うだけで抒情性をも守備範囲に入れているのが現代川柳です。3年ほど前、短歌同人誌「かばん」に入っていましたが、彼らの創る川柳には感情の「ゆらぎ」が乏しくて違和を覚えていました。あれは彼らの短歌的発想の反映なのじゃないのか・・・と、今は捉えています。川柳は取り澄ました客観的叙景ではどんな選者も抜かないでしょう。私小説風な俳句的発想と看做すからです。番傘系川柳に軸足を置いて短歌・俳句を作るのは、吐き出す内容物によって形式を選択しているからにほかありません。これからも川柳から短歌・俳句を照射してゆこうと考えています。

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転載 9. [短歌]

 題詠100首★2019に挑戦しました。これで2回目ですが、けっこう難しくて短歌で題詠というのはテーマがあるから一見易しそうですが、深く読みすぎてもおかしくなるし・・川柳でいうところの「字結び」(与えられた字を必ず使わなければならないというルール)なので、連想とことばの蓄積が問われるようなのです。※なお( )内の「酒害体験」は、今回に限ってのハンドルネームです。



2019-001:我(酒害体験) っていうか我とわが身の置きどころどこにもなくて膝を抱える


2019-002:歓(酒害体験) 歓喜の歌を聞いてる地割れした活断層の古い段差に  ※歓喜(よろこび)

2019-003:身(酒害体験) 虫喰いの身ではないかと振り返る四十年間酒に溺れて


2019-004:即(酒害体験) 花筏即(つ)かず離れず流れゆく なあ俺たちこれでいいのかい

2019-005:簡単(酒害体験) 簡単に気合を入れるときれいごと酒を飲まなきゃ何もできない

2019-006:危(酒害体験) 何度でもチャンスはあった酒を断つ へど吐き血を吐き命の危険

2019-007:のんびり(酒害体験) のんびりと年を越したか砂壁の黴よ お前の世界は広い


2019-008:嫁(酒害体験) 嫌いだと写真をくれた人 嫁になれよと言ってしまった


2019-009:飼(酒害体験) たそがれる気分のままに春嵐飼い馴らせない虫を宥める


2019-010:登(酒害体験) 白壁の街に埋もれる風の道 知らないうちに登る山坂


2019-011:元号(酒害体験) 元号がなければないで困らない ひらがなだけの元号もいい


2019-012:勤(酒害体験) 勤行を終えて四月の雨を聴く断酒会には行かねばならぬ


2019-013:垣(酒害体験) 朝露の垣のしずくに透かし見る色は光の与える力


2019-014:けんか(酒害体験) アル中の弟何をわめくのか けんかをしても何も生まれぬ


2019-015:具(酒害体験) ふと思う私なんかでよかったら誰かのための道具になれば


2019-016:マガジン(酒害体験) 胸うちに屈していてもマガジンの記事に魅かれる光明を知る

2019-017:材(酒害体験) 薄闇に枯葉が路に跪(ひざまず)く歩けば歌の材にも出会う


2019-018:芋(酒害体験)  片夢の中に埋める芋づるの言葉きれぎれ声にならない


2019-019:指輪(酒害体験) 片頭痛ブラックアウト醒め果てる指輪の跡に歪(いびつ)な軽み

2019-020:仰(酒害体験) 仰いでも師の影踏んで夢の果て迷惑ばかりかけてきたのか


2019-021:スタイル(酒害体験) スタイルと云えばそうかも知れないが吹かない風を通して過ごす

2019-022:酷(酒害体験) ごめんね!ごめん酷い話の縁結びアナタの時間抱いてあげたい


2019-023:あんぱん(酒害体験) あんぱんを食べて血糖値が上がる?それでも私あんぱんが好き

2019-024:猪(酒害体験) 筍の皮はほどよく小さくて林の中に猪(しし)の土風呂


2019-025:系(酒害体験) 霧に倦む菜種梅雨とは今さらに星の系図を足もとに見て


2019-026:飢(酒害体験) 花は花あなたの前にさらけ出す飢えていますと酔いにまかせて


2019-027:関係(酒害体験) 響きあう関係あろうとなかろうと男と女されど人間


2019-028:校(酒害体験) 夕まぐれ記憶回路に火花散る転校生は肩聳やかす


2019-029:歳(酒害体験) 令和にも歳のかげりはあるものを一日断酒ひたすら誓う


2019-030:鉢(酒害体験) 寄せ植えの鉢の根っこは絡み合い 金魚を池に放せば太る


2019-031:しっかり(酒害体験) 花栗の精を押し退(の)けしっかりと朱欒(ざぼん)の香り部屋に住み着く

2019-032:襟(酒害体験) 情念の乾びるままに襟足をなぶらせながら庭を掃くひと


2019-033:絞(酒害体験) 絞められて寂しいものと葦の輪のかなたに何を見るというのか


2019-034:唄(酒害体験) にわたずみ川のなみまに唄音(ばいおん)を重ね重なる風のいたずら

2019-035:床(酒害体験) 月灯り微かに射せり魂のあなたの来たり今も床旧(とこふ)る


2019-036:買い物 (酒害体験) 夏草の真っただ中に分け入って買い物袋置いて寝転ぶ


2019-037:概(酒害体験) 概ねはあなたの言葉そのままに信じています 夜叉の裏顔


2019-038:祖(酒害体験) 祖神(おやがみ)の草に埋もれて守りいる無常の風に思い重ねる

2019-039:すべて(酒害体験) ふつふつと五月の微熱騒ぎ出す前頭葉の皺のすべてが


2019-040:染(酒害体験) わが心(むね)を染めつつ朝のひかり生(あ)る唐八景の芝のささめき

2019-041:妥(酒害体験) あなたへの思いに妥協したくないラインじゃ匂い送れないから


2019-042:人気(酒害体験) さきくさのなかに隠(こも)れる山神の人気なき径石の苔むす

2019-043:沢(酒害体験) いくつもの無名の沢を渡りゆく宮摺までのやまなかのみち


2019-044:昔(酒害体験) 何度でも何度でも聞くお袋のたどたどしくも息づく昔


2019-045:値(酒害体験) 一円の値打ちのなかに秘められる未来志向という名の坩堝(るつぼ)

2019-046:かわいそう(酒害体験) ひとりぼちかわいそうだと思うまい酒害に疲れた母子を想う

2019-047:団(酒害体験) 地団駄を踏んで仏の顔ひとつ三枚舌を持てぬ島国


2019-048:池(酒害体験) 古池の葦も魚も骸骨も埋めて築いた家に住む人


2019-049:エプロン(酒害体験) エプロンをはずし忘れる人だから君が楽しいなんとはなしに

2019-050:幹(酒害体験) 天翔けてあなたをはっしと抱きたい聳える幹の樹液浴びつつ


2019-051:貼(酒害体験) 下垂する瞼のテープ貼り直す短歌にのめり込む真夜の淵


2019-052:そば(酒害体験) とりあえず出社の前にそば啜る習い懐かし野田の立ち喰い


2019-053:津(酒害体験) 口之津の玉峯禅寺観世音 西望翁の心奧の声


2019-054:興奮(酒害体験) 愛してないわ ただ興奮が冷めただけ孕んで酒を止めた暮らしに

2019-055:椀(酒害体験) 汁椀のふちに欠けあり唇の触らぬように確かめる朝


2019-056:通(酒害体験) 形骸に遊ぶか月の裏灼けて光も見えず通り一遍


2019-057:カバー(酒害体験) にっぽんの浜辺すべてをカバーする禁酒法案国が定めよ


2019-058:如(酒害体験) 如何せんアル中やから嗜まぬ早寝早起き朝露を踏む


2019-059:際(酒害体験) 文字ひとつ心の際にうずくまる耳にまぼろし風の切岸


2019-060:弘(酒害体験) 弘法はひとりの人の名ではない曲がり指立て飲む昔から


2019-061:消費(酒害体験) 命など朝な夕なのひとしずく消費を惜しめ阿から吽まで


2019-062:曙(酒害体験) それぞれの曙それぞれの季節風振り切って今日を始める


2019-063:慈(酒害体験) 忘却の滋訓の外に明け暮らす愛河の岸を彷徨うままに


2019-064:よいしょ(酒害体験) いつの間によいしょと声を合わせてる公園わきの九十五段

2019-065:邦(酒害体験) 合邦の付けを令和に払わせる韓半島を癒やす試み


2019-066:珍(酒害体験) ありふれている風景の外(と)に内に珍しいもの出会いを探る


2019-067:アイス(酒害体験) もしかしてアイスクリーム梓弓返る時代の先にあるもの


2019-068:薄(酒害体験) 夕月夜(ゆふづくよ)入る間ことの葉さ乱れてこぞの薄を踏むや野風の

2019-069:途(酒害体験) 抗酒剤疑いながら酒を飲む断酒途上の事実をひとつ


2019-070:到(酒害体験) とき到るもう見返りを求めない歓びだけを求めてゆこう


2019-071:名残り(酒害体験) みよ そこに確かにそれは息づいてドゥイノの館名残りの墓標

2019-072:雄(酒害体験) 愛欲の雌雄もとより一系を軽んずべからざるとは云へど


2019-073:穂(酒害体験) 娑婆世界心の継ぎ穂あればこそ散骨好けれ花を一輪


2019-074:ローマ(酒害体験) 長崎の町はローマに献げらる異教徒拒む壁のありけり


2019-075:便(酒害体験) 便利さの中に潜める落とし穴文明の果て何が待つのか


2019-076:愉(酒害体験) 愉しみは夜に取り置くお勤めを済ませてまずは夕餉の支度


2019-077:もちろん(酒害体験) 愛国で現状批判うた詠みの矜持もちろん独り善がりの


2019-078:包(酒害体験) 包まれていたいと思う愛すれば手もつなぎたいキスもしたいと


2019-079:徳(酒害体験) 徳あれば褒めよと経に書いてある般若の中の愛語というは


2019-080:センチ(酒害体験) おセンチな君と云っても通じない女子高生に鼻で嗤われ


2019-081:暮(酒害体験) 夏座敷けだるいままに暮れてゆくSNSに時を忘れる


2019-082:米(酒害体験) 米櫃の無い暮らしぶりなんとなく切り離された小舟みたいだ


2019-083:風呂(酒害体験) ここに来て風呂に浸かった記憶無しガス水道を切り詰めている

2019-084:郵(酒害体験) 不審者の多いと教える人が居て郵便受けを常にまさぐる


2019-085:跳(酒害体験) 跳躍を期して力を貯めているもうすぐそこに明日が見える


2019-086:給料(酒害体験) 平成の初めに比べ給料の額は違えど同じ小遣い


2019-087:豊(酒害体験) 豊満な躰もいいがそれよりも肌理の細かさそれこそ命


2019-088:喩(酒害体験) あのひとを喩えて云えば平成の晶子と思う愛をうたえば


2019-089:麺(酒害体験) 素麺が一番だよと口癖に母はのたまう四季それぞれに


2019-090:まったく(酒害体験) まったくのとばっちりだと云いたげに西から東梅雨前線


2019-091:慎(酒害体験) 慎んでことばを選ぶfbの不毛な会話ひとに頼るな


2019-092:約束(酒害体験) 約束を忘れた訳やないなんてどの口が言う仕事も行かず


2019-093:駐(酒害体験) なつぞらにぽっかり空いた駐車場トラック錆びてプレートも無く

2019-094:悟(酒害体験) 熱に浮かされ悟ったような顔をしてひとの話に茶々を入れるな


2019-095:世間(酒害体験) 得得と世間話にからませてあなたの気持ちわかる気がする


2019-096:撫(酒害体験)  撫でながら肌のざわめく哀しみをひしと抱いていざ夜の歌


2019-097:怨(酒害体験)  怨まれて恨むことなど忘却の穢土に死しても第五楽章


2019-098:萎(酒害体験)  どうしても湘子の俳句目に浮かぶ四肢萎ゆるとはもがいての句か

2019-099:隙(酒害体験) 青蔦がひさしと壁の隙間からにうと浮かんで風に吹かれる


2019-100:皆(酒害体験) あの日には泥鰌でしたよ魂を救う手立ては皆目なくて



◎ なんとか完走したわけですが、順繰りに投稿しなければならないし、あとから訂正するにはルールが決められていますので、推敲を放棄した歌も多々あります。期間は2019年2月から11月末日まででした。

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転載 8. [絶句]

 ☆ どうして漢詩なんかを作るのかと云えば、それは大学時代・・詩吟部に入り日々鍛錬していたのだが、高校の時 応援団に居てせいで喉をつぶしていたせいで声がうまく出ず悶々としていた時、師範から漢詩の手ほどきを受けのめりこんだのが今に至っているのです。実を云えば高校の時、現代国語の教師が授業時間に杜甫の春望を吟じてくれたのが鮮明であったことと、漢文の授業では詩文の七五調訳を得意にしていたことなどが下敷きにありました。詩吟の師範が中国文学の専攻であったことも、私らに作詩を教えるきっかけになったようで、「吟じる」前に対象の「詩」のほうに私の関心が強かったことから徐々にそちらに軸足を変えていくようになりました。今でも最初に作った詩を覚えています。それは五言絶句でこんなものです。


     対飲清空裏

     星稀客夜長

     霜楓明月宴

     落落酌雲觴


       対飲す清空の裏(うち)
       星 稀にして客夜(かくや)長し
       霜楓(そうふう)明月の宴
       落落 雲觴を酌む
 今からみれば用語にいささか難があるのですが、面白みはなくても神仙思想を夢見るような発想をしていたのだなぁと・・考えたりします。絶句に限らず色々な詩形を試み、鍛錬もしましたが対句を使う律詩、排律や宋詞にはじまる塡詞などは音韻に詳しくないものには、難しいうえに面白みをとらえにくいところがあり、もっぱら絶句ばかりを作るようになりました。対句をひねり出すような熱情というかエネルギーが湧いてこないのも事実です。十数年は忘れていたのですが、最近また手を染めるようになりました。
 さて近作を並べます。

白木蓮旬日笑

満街春意自喧

断絶境涯風刻

青天料峭欲翻


白木蓮旬日の笑(え)み

満街の春意 自(おのずか)ら喧(かまびす)し

断絶の境涯 風の刻(とき)

青天料峭として 翻(ひるがえ)らんと欲す


六絶拗体  偶感 上平声十三元韻

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仰いでも弦の見えない手風琴



雲帯黄風料峭

彷徨夢日月間

離脱症候猶有

酒軽信義太頑


雲は黄を帯び風は料峭たり

彷徨(さすらひ)の夢は日月の間

離脱の症候 猶 有するがごとく

酒は信義を軽んじて太だ頑(かたくな)なり

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偶感 六絶拗体 上平声十五刪韻


無門関 茶を点てている四畳半



等閑相結了

不説已昏黄

独弄飛梅事

微吟歩柳楊


等閑(とうかん)に相結び了(おは)りぬ

説(と)かず已(すで)に昏黄(くれなず)むを 

独(ただ)飛梅(とびうめ)の事を弄して

微吟 柳楊に歩む


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遇感 五絶平起式 下平声七陽韻


眉を刷く暗い御空に冬の月  



雲低(た)れて雨を催(もよほ)す 屛居(へいきょ)の東

春気溢横(いつおう)残日の風

一帯の暗香 梅裏(ばいり)の客

鴉群(あぐん)帰りなん 故山の中(うち)


雲低催雨屛居東

春気溢横残日風

一帯暗香梅裏客

鴉群帰去故山中


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春日黄昏歩岸偶成 七絶 平起式 上平声一東韻


雲はたれこめ今にも雨になりそうな気配が(引きこもっている)我が家の東の方に覗える。

辺り(あた-り)には春の気分が溢れ 黄昏れの風が軟らかい。 辺りに立ちこめる微かな香り その梅の中に居て、 上空の鴉の群れも居場所の山に帰ろうとしている。


恋情の雪に塗(まみ)れて路の辺(へ)に黄昏れゆきてただの花びら



午閑天可訴

九月雨寥寥

欲問無情処

何為躁晩蜩


午(ひる)閑(のどか)にして天訴うるべし

九月の雨は寥々たり

問はんと欲す 無情の処

何為(なんす)れぞ晩蜩(ばんちゅう)の躁(さわ)がしき


被触発歌謡曲即吟

歌謡曲に触発されて即吟す ※「蜩」は「ひぐらし」


五絶 平起式 下平声ニ蕭韻


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春めくや百家争鳴舞台裏



篁裏垂紅怨

雨含清艶幽

崎陽梅点点

疑雪路辺遊


篁裏(こうり)紅怨 を垂(た)る
雨は清艶を含みて幽(かす)かなり 
崎陽(きよう)梅 点点たり 
疑うらくは雪の路辺に遊ぶかと


煙雨観梅即吟 五絶 仄起式 下平声十一尤韻


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不堪聞是隔林鐘

一帯紅霞万緑濃

牀上余薫後朝別

梨花銷夏点晴峰


聞くに堪えず是れ林を隔つるの鐘

一帯の紅霞 万緑濃し

牀上の余薫 後朝(きぬぎぬ)の別れ

梨花 夏を銷して晴峰に点ず


遇成  七絶 平起式 上平声二冬韻


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哀しくて聞くに堪えないのは林を越えて来る鐘の音。 一帯には躑躅の紅 山の木々の緑は濃い。 ベッドに残る匂いは今朝 別れたあなたのもの、 初夏の寝苦しさを削ってくれる梨の花は 遠くに見える峰に点じている。


ひとり寝のベッドの上の残り香やたらちねの母想ふごとくに



個的精神個的天

感来傷柳帯寒煙

流光月下声凄艶

独臥窓中足酔眠


個的精神 個的天

感じ来たって傷む 柳は寒煙を帯びたり

流光月下 声 凄艶

独臥 窓中 酔眠足る


日業前遇感を佳君に寄す

日業前遇感寄佳君


七絶 仄起式 下平声一先韻


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一個の精神は一個の天に匹敵する。 感じることのあって柳の薄ざむい靄を帯びている様子を哀しむ。 満天の月の下 あなたの声は凄みと艶を感じさせる。 独り寝そべる窓の中 私は酔うて眠っている。


衣々のあなたの中に眠る朝 幽(かそけ)き夢や月有り明けに



塵境及時成賦

巷間声不堪聞

月白色銀天漢

山桜暗放春芬


塵境 時に及びて賦を成す

巷間の声は 聞くに堪えず

月白色(げっぱくしょく) 銀天漢(ぎんてんかん)

山桜(さんおう)暗くして 春芬(しゅんぷん)を放つ


偶感  六絶 拗(よう)体 仄起式 上平声十二文韻


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社会にもまれて折りに触れ写実の詩を作る。 しかし、巷間の声は 聞くに堪えない。 月白色はたまた銀天漢といい、 これこそ心を慰めてくれる。 山桜(やまざくら)の姿は、ほの暗く 春芬(しゅんぷん)〈春の香り〉を放っている。


満ち足りて大空占むるほのぼのと月白色の明かきあかあか



風比江天彩筆飛

不眠梟夢対流暉

山中蚕室別雲色

落下傘尊螢燭微


風は江天に比(なら)ふて彩筆を飛ばす

不眠の梟夢(けふむ)は流暉に対す

山中の蚕(さん)室 別雲の色

落下傘は尊ぶ 螢燭(けいしょく)の微なるを


偶成  七絶 仄起式 上平声五微韻


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風は山河を見習って彩りの筆を揮って色を加えてゆく。 不眠の梟の夢は過ぎ去る年月に対峙するかのようだ。 山中にある宮刑の囚人の部屋は全く別の色を成すようで、 落下傘は蛍の明かりのようなかすかな光を尊ぶのさ・・。


むらさめの打ち来たりける午後なれば襲(かさね)をはおり松の声聴く



日日煩悶理外縁

酒杯傾尽老来癲

甲東山畔浮生処

梅裏佳人霹靂天


日日(にちにち)の煩悶 理外の縁

酒杯傾むけ尽くして 老来 癲(くる)ふ

甲東山畔(こうとうさんぱん)生を浮かぶる処

梅裏(ばいり)の佳人 霹靂(へきれき)の天


日々(ひび)の煩悶は まさしく理外の縁のこと。 酒杯を傾けつくして 追い来たっては 竟(つい)に癲(くる)ってしまった。 六甲山の東側に人生を浮かべたはずの処がある。 梅花乱れる裡(うち)に住む佳き人にとっては霹靂の天であったろう(そんな別れだったよ・・)


偶成其之二  七絶 仄起式 下平声一先韻


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梅の香に酔ふとはなくて十六夜の月に誘はれ君と遊びき



東海消憂点点閑

寂光雲外照春山

旅懐応発青天麓

梅裏多情瞰小湾


東海憂いを消して点点 閑(しずか)なり

寂光 雲外 春山を照らす

旅懐 応(まさ)に発(ひら)くべし青天の麓

梅裏の多情 小湾を瞰(み)る


偶成其之一  七絶 仄起式 上平声十五刪韻


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列島 酒で憂いを消し ぽつぽつと静かな境地。 寂しげな光が雲の外に 春の山を照らしている。 旅情はまさに青天の麓に開かれようとしている 梅の花が咲き、その思いを込めて(鳶は)小さな入り江を見下ろしている。


おそ咲きの実梅ゐ並ぶ春の日に入り江見下ろすとびの遊弋

好きだったそう言えば良かったのかい午後5時の鐘 丘から丘へ




自遣微風暮色寒

満枝寥寂雪情閑

海東塵境千年酔

遊弋鳥臨梅裏湾


自遣  七絶上平声十五刪(サン)韻 (みづから 自らを慰める)


みづから微風に遣る 暮色寒し

満枝の寥寂 雪情 閑(しづ)かなり

海東の塵境 千年の酔(すい)

遊弋の鳥は臨む 梅裏(ばいり)の湾


みづから微風に 自らを慰める 夕暮れの気配は寒い。 枝に満ちる梅の雪のような情感に(その静けさに)心惹かれる。 (大陸から見れば)海東の地に当たる列島の現実はまるで千年の酔いに耽っているようだ。 海上を監視するかのように飛ぶ鳥の目に この一斉に開いた梅に染まった入り江が見えていることだろう。


目の奥に飛びこむ風の鋭さに雀鳴きやむ木立の前で



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転載 7. [俳句]


 寒の時期から早春へ刻々移りゆくめぐりの中で書き留めていた句を並べてみました。


にび色の空 料峭と雀鳴く


唇の渇きに旨し寒卵


はらわたの煮えくり返る互例会


残る雁いにしへびとの言い伝へ


鶴帰るひと群れごとに記憶あり


好き好きに谷渡りする春の声


いちどきに孵らぬ川に蝌蚪の国

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転載 5. [漢詩の話]

 拗体について 拗体とは二四不同二六対の原則ながら、横に並んでいる起承句、承転句、転結句の二言目、四言目、六言目の平仄がすべて反対になっている形式を言います。それを全反法格といいます。正常では、承句と転句で並んでいる字の平仄を同じにしないといけません。これを粘(ねん)法と呼びます。 七言絶句の基本形は以下の通りです。 平起式(二言目が平字であること) ↓ ○○●●●○◎ ●●○○●●◎ ●●○○○●● ○○●●●○◎ これを正格として、仄起式を変格といいます。五言絶句では仄起式が正格。 ※ ○は 平字(平坦な音)(平声:ヒョウショウ)  ●は仄字(尾音が上向き、下向きあるいは、詰まったり尻すぼみだったり・・変化を持つ音)(仄声:ソクショウ)(上声・去声・入声(ニッショウ;文語でいう「フ・ク・ツ・キ・チが音末の字))  ◎は平字の韻  仄字の韻は⦿と表します。

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転載 4. [俳句]

  春待ちの句抄


01.冬の蠅壊れかけゆく人の影


02.思ひ込み始めるベルや草城忌


03.春の雲ひとりで生くる是非を問ふ


04.水餅や雪うっすらと積もりけり


05.春隣 机の向きを変えてゐる


06.茶を啜る三寒四温夢の中


07.バラの棘 六十路の半ば過ぎにけり


08.ゆくりとも君の面影 冬日和


09.憧れは冬青空といふ奈落


10.空っ風さう読ませたく鶏揚げて


11.時雨るとき天地一色こころ消ゆ


12.温石を抱いて眠る夜明け前


13.舞ひ上がる苦しみの果て鰯挿す


14.柊の枝も無いのに厄払ひ


15.はや咲きの梅醸せるや年の明け


16.春を待つ雀の子等や花の岸 (・・・季重なりの失敗作 )


17.落下傘待ちくたびれて蛇苺


18.梟の夢や狩場の成れの果て


19.鼻水を啜って夜の舞踏会

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転載 2. [短歌]

  ちょうど躁鬱の躁にあたる季節に 押しとどめようもない気分のままに紡いだ歌群を読み返すとき 記憶にしまい込んだ・・否・・忘れてしまったはずの風景にとらわれて「ことば」となっていると気づく。しかも、現在と交錯している。


落下傘 憂いを酒に預けおく一日限りのブログの話


開かれし鉄扉(てっぴ)のうへにひとひらの梅炎 (も)えたちて春を愛(お)しまむ



蘇る日々のこと・・連作


1. 靄がかる朝の景色に融け入りて春の眠りを猫に許さむ


2. 滴りのひとつぶごとに宇宙観 よぎる鴉に色即是空


3. 目の奥に飛び込む冬の鋭さに雀鳴きやむ木立の前で


4. ひとことが伝わるならばそれでいい心壊れる前のあなたに


5. 山裾に散らばりながら東西に道の通じる西谷の村


6. 武庫川に刺し貫かれはらからの炊煙のぼる有り明けの月


7. 天頂の降りくる処コルの岸ぶらぶら節にひょうげてゐたり


8. 安定に乏しいひざの上に居てタマはさすがに眠りたいのか


9. ねむれない心どこかへ移し替え季節はずれのみなみ風待つ


10.色に暮れ黒雲渡る長崎のときにどよもす風に驚く


11.断崖の傾れのような雲の浮く仁川の傍に蘆叢ありて


12.いらだちを抑えて歩む冬の日に野母の半島 天草の洋


13.おそ咲きの実梅ゐ並ぶ春の日に入り江見下ろすとびの遊弋


14.好きだったそう言えば良かったのかい午後5時の鐘 丘から丘へ


15.梅の香に酔ふとはなくて十六夜の月に誘はれ君と遊びき


16.思ひ出の乳の匂ひに引きずられ頭も眩む春そのものに


17.子を捨てて戸を出でボヘミアン・ラプソディを観て居る男と女


18.10回も観れば厭でもわかるだろ鉄線奏でるロックの嘆き


19.山茶花のひとつ揺れ居る残寒の霧に包まれ旅立つ覚悟


20.早出しのゴミは漁られ車道まで散り敷くままに偽りの花


21.開かれし鉄扉のうへにひとひらの梅炎えたちて春を愛しまむ(再掲) 


22.昨日今日カレンダーには何もない雪もないから酒慾しくない


23.むらさめの打ち来たりける午後なれば襲(かさね)をはおり松の声聴く


24.目に視えぬ路のあるのか来迎にらせん描ける鳶の領域


25.踊り場の美しき唇その舌に夕影忍ぶ干し柿を食む



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伝えたいことがある  [短歌]

  ☆ ふと唇を突いて出る「うた」・・・舌の上でのみ吟味しては空で推敲を加える。それが「うた」の面目ではないかと思いたい。

 


今そばに居て欲しいのは君だけと書けたらきっとすっきりするよ  


やめられぬタバコをやめる口実にしたくないから独り黄昏    



 今は昔(?).....大阪の地下街が水に襲われたことを憶いだしました。  


肅々と網目のような地下街になだれこむ水 止まる営み  


ぬかるみを選んで歩く野良の道そんなゆとりを持てぬ大都市     


 ☆「歌」について…「歌」の精神史  山折哲雄(中公文庫)を読みつつ…  


アララギは万葉集を捨てたのか 令和二文字の出処進退  


文学のステロタイプに掬われる戦争うたなど私は詠まぬ  


ひとくれの散文論じゃ癒されぬ 調べと響きわが胸にあり  


昼日中世界枕に高鼾これでいいのかこれでいいのだ      



雑感2首  


網膜の赤い残像日曜の昼下がりにも働いてゐる  


自転車が道の真ん中迷惑を構ひもせずに蛇行してゆく



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