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転載 2. [短歌]

  ちょうど躁鬱の躁にあたる季節に 押しとどめようもない気分のままに紡いだ歌群を読み返すとき 記憶にしまい込んだ・・否・・忘れてしまったはずの風景にとらわれて「ことば」となっていると気づく。しかも、現在と交錯している。


落下傘 憂いを酒に預けおく一日限りのブログの話


開かれし鉄扉(てっぴ)のうへにひとひらの梅炎 (も)えたちて春を愛(お)しまむ



蘇る日々のこと・・連作


1. 靄がかる朝の景色に融け入りて春の眠りを猫に許さむ


2. 滴りのひとつぶごとに宇宙観 よぎる鴉に色即是空


3. 目の奥に飛び込む冬の鋭さに雀鳴きやむ木立の前で


4. ひとことが伝わるならばそれでいい心壊れる前のあなたに


5. 山裾に散らばりながら東西に道の通じる西谷の村


6. 武庫川に刺し貫かれはらからの炊煙のぼる有り明けの月


7. 天頂の降りくる処コルの岸ぶらぶら節にひょうげてゐたり


8. 安定に乏しいひざの上に居てタマはさすがに眠りたいのか


9. ねむれない心どこかへ移し替え季節はずれのみなみ風待つ


10.色に暮れ黒雲渡る長崎のときにどよもす風に驚く


11.断崖の傾れのような雲の浮く仁川の傍に蘆叢ありて


12.いらだちを抑えて歩む冬の日に野母の半島 天草の洋


13.おそ咲きの実梅ゐ並ぶ春の日に入り江見下ろすとびの遊弋


14.好きだったそう言えば良かったのかい午後5時の鐘 丘から丘へ


15.梅の香に酔ふとはなくて十六夜の月に誘はれ君と遊びき


16.思ひ出の乳の匂ひに引きずられ頭も眩む春そのものに


17.子を捨てて戸を出でボヘミアン・ラプソディを観て居る男と女


18.10回も観れば厭でもわかるだろ鉄線奏でるロックの嘆き


19.山茶花のひとつ揺れ居る残寒の霧に包まれ旅立つ覚悟


20.早出しのゴミは漁られ車道まで散り敷くままに偽りの花


21.開かれし鉄扉のうへにひとひらの梅炎えたちて春を愛しまむ(再掲) 


22.昨日今日カレンダーには何もない雪もないから酒慾しくない


23.むらさめの打ち来たりける午後なれば襲(かさね)をはおり松の声聴く


24.目に視えぬ路のあるのか来迎にらせん描ける鳶の領域


25.踊り場の美しき唇その舌に夕影忍ぶ干し柿を食む



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