ふっと息を抜いただけなのに [川柳]
おおよそ3か月も空隙のままに過ごしてしまいました。再開の一発目は川柳です。「桜を見る会」なんて・・・今まで問題にもならなかったのに問題になってしまうのは、安倍首相の人徳(?)の故であろうか?
過充電昼のあくびが止まらない
排水門開けて干潟が戻るのか
再生の手を拱いて意地を張る
分断をするのはいつも我の論理
国交が無くていいとは言いかねる
支援者の顔はサクラの顔である
鼻高々と贅をふるまう安倍夫妻
特権のひとつ花見に税使う
桜見る会ツアー旅行のワンショット
持ち時間(20句連作) [川柳]
県文芸の応募作です。投稿してずいぶんになるし、締め切りからも20日以上経つので、こちらに掲げてもいいかと思いまして・・・「余生」などとはとてもではありませんが、云える齢と思っていませんので「持ち時間」としました。
巻きついた枷をほどいて荷を下ろす
歯車を切り換えながら歩きだす
カタルシス覚めた目で見る半世紀
ももしかも百歳という持ち時間
一切は途上そのもの春返る
はみだしてゆくDNAに導かれ
螺旋階段目の前で消えてゆく
持ち時間何を拾うか面白い
羅針盤狂いだしても楽天家
平等に万人の手に今がある
若さとは今を感じる心持ち
しなやかに惑う心が融けてゆく
身に残る棘を抜いては捨ててゆく
今はまだ旅の白衣に用はない
ゆきずりの恋わが持ち時間待ったなし
古希にまだ手が届かない深呼吸
後期高齢まだ見ぬ世界待っている
みな違う老いという名の風まかせ
持ち時間フル活用のピンコロリ
生臭い海泳いでる泳いでる
実感は実感なのだけれども、恐らくこれは撥ねられるに違いありません。自由題とはいえ、テーマが大きすぎたのかもしれません。もっと練るべきだったかな?・・と今にして思います。
やっと夏になったのに [川柳]
やっと夏になったというのに、あと10日もすれば暦(旧暦)では立秋となり 残暑お見舞いなどと書かないといけなくなる。それは否応もなく長崎の被爆の記憶を思い起こすことになる。慰霊の日などと云われるが、市民・・いいえ人類にとって2度と忘れてはならない怒りの原点なのです。無謀な戦争に走った自国の為政者への恨みより、核爆弾を投下したアメリカ合衆国への憤りより・・この過去をいまだに容認している「多数派」を優先する選民思想を胚胎しているかもしれないことを告白しなければならない やり場のない哀しみ。なんという悲喜劇。ヒバクシャの血脈をつなぐ一人として繰り返し詠っていくことになるだろう。
新涼の朝 爆心地静まらず
真実を知らない人のツーショット
骸(むくろ)焼く臭いと煙あちこちに
語り部の火球のあとの黒い雨
校庭に骸重ねて焼く記憶
たましいの這い出る隙もない地獄
ヒバクシャの記憶すべてを受け容れる
血の中にヒバクシャの怒り哀しみ
どこまでも続く皮膚熔け肘を曲げ
火を見つめ背のおとうとは死んでいる
外つ国のひと賑わっている長崎忌
NHKの番組が語るような・・あの少年の足で日見のトンネルを抜け矢上に行ったなんて信じられないと91歳の母は言う。時津の方へ行ったのではないか‥と。それほど、被爆後の市街地は焦土化していたし、強制疎開に遭った街区や学校の校庭など・・空地のいたるところで腐敗し始めた屍を焼く異臭が充満していた・・と。
現在時点での推測で調査することの困難さを思い知る。証言はヒバクシャの死とともに記録されない限り消えてゆく運命にある。ヒバクシャの遺骸を焼いた場所が今は緑の中であれば問題にもなるまいが、住居であれば果たしてどうであろう・・。慰霊の塔の一つも建てるだろうか‥? 現実はそれほど甘くはない。おそらく忌避の場所としてクチコミのなかに留められるだろう・・。
蝉の声 あの日も街に満ちていた
青空の中に閃光 きのこ雲
遠ざかる銀の翼を誰も見ず
侵略のツケを払った無辜の民
慰霊の日なぜ天皇は来ないのか
象徴の立場 政治を嫌うのさ
いつまでも どこまでも [川柳]
「いつまでも」そして「どこまでも」夢を追いかけていきたいものだ。そうでないと死んでしまうしかないのだから・・。人間は宇宙そのものだから、際限がないはずなのだが終わりがあるのは時間軸と云うものの絶対支配下にあるからなのだ。もちろん宇宙にも終わりがあるだろう・・・だがそれはカオス(渾沌)=原初・・への収斂として巡り巡ってゆく回帰。寸刻の粒子の生であってもドラマがあり、死と生を繰り返す魂の営みがある。そういう風に思うようにしている。川柳の世界把握はこういうことに由来するのではないかと考えている。
死に票とわかっていても夢を賭け
戦争を仕掛けて息を継ぐ世界
生贄はいつも庶民となる構図
敵の敵 獅子身中に寄生する
和平とはインターバルのようなもの
内向きの顔 外向けの面汚し
宿願を果たせば民が逃げてゆき
身の程を知って血よりも水が好き
安全の神話にすがるエゴの貌
温暖化黒い揚羽が北めざす
日曜日カミキリムシはひと仕事
チャイナ帝国の核開発にさらされたウィグルの悲劇を忘れるまい [川柳]
なぐさめるコトバどこにも見つからぬ
ウィグル死すや チャイナの風に煽られて
抑圧のチャイナ ウィグルに死の恐怖
中華なるコトバに潜む欺瞞性
西に南に漢民族の覇権主義
ウィグルに核実験の放射能
ウィグルのヒバクシャに無い援護法
独善の論理 被爆を顧みず
★どうしても核にこだわるのは被爆二世としての身体感覚かな?と思います。
真夜の「やなぎ」一覧 [川柳]
〈やなぎ序〉
・導入剤飲まずに深夜目を覚ます
・575をつぶやきだして止まらない
Ⅰ. 〈真夜中に政治談議をしたくなる〉
・なんとなれば言葉のゲーム氷抱く
・切り返す言葉は不要やり過ごす
・トランプは過剰反応待っている
・地政学リスク高める饒舌家
・75%米軍経費驚異的
・安保破棄よだれを出すな中華主義
・外交、安保毒を吐いてはリークさせ
・日本国戦略基地の貌を持つ
・沖縄にチューブの中の高密度
・いまもなおヤマトのための盾となる
・平和ボケ右往左往の日本人
・昔琉球今や日本の立ち回り
Ⅱ. 〈干天の慈雨と云っては持ち上げる〉
・待望の氷の粒が梅雨となる
・梅雨入りの宣言を待つ民の声
・干天に火事が多くて雨待たれ
・長雨の予報になぜか安堵して
・舌の根が乾かぬうちに慈雨厭う
Ⅲ. 〈夢から帰れば ただの人〉
・雨だれの音と重なる震度1
・若かりし人の夢 友でなく
・目が覚めて半信半疑の愛煙家
・ゆっくりと時間の波にチューニング
・出し殻に熱湯注ぎジャズを聴く
・575の袖に手を入れ肩を入れ
・覚醒の目は冷め茶碗見つめてる
・午前2時あしたのために眠りたい
それぞれに「今」がある 川柳20句 [川柳]
☆ これは母と私と飼い猫『たま』を題材に作った連作です。
母・息子・猫の会話がはずむ夜
母曰く数えで齢は九十三
母はまだ食に意欲を持っている
食べたくて週に三度は魚さばく
物忘れ南京ソウル今少女
味噌はどこ朝の一刻足に猫
仏壇のうえから猫は母守る
精霊は猫のまなざし母包む
父を恋う母は忘却していない
ごった煮のまま共依存父帰る
恍惚の人を幼児と看做すまい
ゆるゆると言葉を探す 待っている
終活を始め思い出切り捨てる
従弟の名 遊んだ記憶霧の中
百聞の被爆体験ナマのまま
語られて分ちあえないもどかしさ
無縁塚被爆二世として詣る
教え子の顔と名前が蘇る
足ることを知って思いのまま生きる
極楽へ前がつかえて待たされる
ボヤキじゃありません! [川柳]
☆川柳は本来、権力に阿(おもね)ることなく社会状況を切り取って笑い飛ばすところにおもしろさがある。それゆえ、理知的であるともいえるし、ポエムがないとも見える。250年の歴史を持つ伝統文芸であることは、言うまでもないがその歴史を意識することはあまりないものである。
柳壇の左の左後ろ向く
宗匠の言うまま気まま祭り果て
ポピュリズムわが身に還るブーメラン
カーテンをそよがせ匂う夏化粧
駄句飛ばし肋(あばら)まさぐる昼下がり
蝿捕りと守宮(やもり)とわれとひとつ屋根
沖縄は今なお棺の中に住む
沖縄忌野ざらしの骨骨目玉
玉串の無くて怒号の沖縄忌
変調の波(1) [川柳]
☆ かなりの割合でおおかたの川柳人とは、兼題のとらえかたが違うような気がしている。うまくフォーカスできていない・・といわれれば首肯するしかない。まだまだ初心者の域を出ていないのだし、経験も浅い。そうであっても、自分の感性を磨いてゆく気持ちは強く持っている。もちろん、選歌されることを通して自己研鑽してゆくという点において・・である。ブログを開設するにあたって、「今の私」を・・このブログをお読みいただく方々に提示することから始めたいと思います。
6/13
夢舞台 二十歳のころと違う春
この余白 想定外の宝島
豊饒に会う予感ここは辺境
メルクマール見つからなくて ひげを剃る
6/14
窓虫に見られて真夜を跨ぐ日々
かなぶんが心の隙を突いてくる
6/15
裸虫ガラスに映る傷のあと
タバコ手に躁に向かって走りだす
変調の波を愉しむ朝の幻想(ゆめ)
レモンの双葉あの日からつながってゆく