誤用の「通奏低音」のようなもの [短歌]
☆見るからに物はあれども飢え渇きこころをただに持て余すのみ
どこをどう手繰っても自らの限界を破りぬけることは不可能に思える。ことばの鍛錬不足というより、内にこもっていた時間が長すぎたのだろう。酒を飲んで、酩酊のうちに自己満足していたことが・・つまりは外に向かって探求してこなかったツケがこうして今、たどたどしい言葉遣いになってあらわれていると 密かに悔やんでいる。だからといって、すっかり諦めているのではないのだが・・。「余生」という冠詞をいただくわけにはゆかない。熟年というステージは閉鎖回路ではなく、むしろ多岐にして猥雑な開放空間なのだと思っている。
血の系譜無くして与えられしもの処方箋なぞ無きに等しき
素裸に蒸しタオルもて陰茎と寝汗拭いて朝霧を吸ふ
蝉の声思はぬことに流されて友でありしかいまは亡き身の
なまなまし喪服の下に蠢くはうたかたびとのゆきずりの指
わが胸の仮面の裏にはらはらと打ち毀れゆく纏ひけるもの
醒めくれば鏡の中に一個たり60兆の細胞にして
短命のヒト生まれ死ぬるはうたかたの一生(ひとよ)に如(し)くは無きとぞ思ふ
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