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転載 9. [短歌]

 題詠100首★2019に挑戦しました。これで2回目ですが、けっこう難しくて短歌で題詠というのはテーマがあるから一見易しそうですが、深く読みすぎてもおかしくなるし・・川柳でいうところの「字結び」(与えられた字を必ず使わなければならないというルール)なので、連想とことばの蓄積が問われるようなのです。※なお( )内の「酒害体験」は、今回に限ってのハンドルネームです。



2019-001:我(酒害体験) っていうか我とわが身の置きどころどこにもなくて膝を抱える


2019-002:歓(酒害体験) 歓喜の歌を聞いてる地割れした活断層の古い段差に  ※歓喜(よろこび)

2019-003:身(酒害体験) 虫喰いの身ではないかと振り返る四十年間酒に溺れて


2019-004:即(酒害体験) 花筏即(つ)かず離れず流れゆく なあ俺たちこれでいいのかい

2019-005:簡単(酒害体験) 簡単に気合を入れるときれいごと酒を飲まなきゃ何もできない

2019-006:危(酒害体験) 何度でもチャンスはあった酒を断つ へど吐き血を吐き命の危険

2019-007:のんびり(酒害体験) のんびりと年を越したか砂壁の黴よ お前の世界は広い


2019-008:嫁(酒害体験) 嫌いだと写真をくれた人 嫁になれよと言ってしまった


2019-009:飼(酒害体験) たそがれる気分のままに春嵐飼い馴らせない虫を宥める


2019-010:登(酒害体験) 白壁の街に埋もれる風の道 知らないうちに登る山坂


2019-011:元号(酒害体験) 元号がなければないで困らない ひらがなだけの元号もいい


2019-012:勤(酒害体験) 勤行を終えて四月の雨を聴く断酒会には行かねばならぬ


2019-013:垣(酒害体験) 朝露の垣のしずくに透かし見る色は光の与える力


2019-014:けんか(酒害体験) アル中の弟何をわめくのか けんかをしても何も生まれぬ


2019-015:具(酒害体験) ふと思う私なんかでよかったら誰かのための道具になれば


2019-016:マガジン(酒害体験) 胸うちに屈していてもマガジンの記事に魅かれる光明を知る

2019-017:材(酒害体験) 薄闇に枯葉が路に跪(ひざまず)く歩けば歌の材にも出会う


2019-018:芋(酒害体験)  片夢の中に埋める芋づるの言葉きれぎれ声にならない


2019-019:指輪(酒害体験) 片頭痛ブラックアウト醒め果てる指輪の跡に歪(いびつ)な軽み

2019-020:仰(酒害体験) 仰いでも師の影踏んで夢の果て迷惑ばかりかけてきたのか


2019-021:スタイル(酒害体験) スタイルと云えばそうかも知れないが吹かない風を通して過ごす

2019-022:酷(酒害体験) ごめんね!ごめん酷い話の縁結びアナタの時間抱いてあげたい


2019-023:あんぱん(酒害体験) あんぱんを食べて血糖値が上がる?それでも私あんぱんが好き

2019-024:猪(酒害体験) 筍の皮はほどよく小さくて林の中に猪(しし)の土風呂


2019-025:系(酒害体験) 霧に倦む菜種梅雨とは今さらに星の系図を足もとに見て


2019-026:飢(酒害体験) 花は花あなたの前にさらけ出す飢えていますと酔いにまかせて


2019-027:関係(酒害体験) 響きあう関係あろうとなかろうと男と女されど人間


2019-028:校(酒害体験) 夕まぐれ記憶回路に火花散る転校生は肩聳やかす


2019-029:歳(酒害体験) 令和にも歳のかげりはあるものを一日断酒ひたすら誓う


2019-030:鉢(酒害体験) 寄せ植えの鉢の根っこは絡み合い 金魚を池に放せば太る


2019-031:しっかり(酒害体験) 花栗の精を押し退(の)けしっかりと朱欒(ざぼん)の香り部屋に住み着く

2019-032:襟(酒害体験) 情念の乾びるままに襟足をなぶらせながら庭を掃くひと


2019-033:絞(酒害体験) 絞められて寂しいものと葦の輪のかなたに何を見るというのか


2019-034:唄(酒害体験) にわたずみ川のなみまに唄音(ばいおん)を重ね重なる風のいたずら

2019-035:床(酒害体験) 月灯り微かに射せり魂のあなたの来たり今も床旧(とこふ)る


2019-036:買い物 (酒害体験) 夏草の真っただ中に分け入って買い物袋置いて寝転ぶ


2019-037:概(酒害体験) 概ねはあなたの言葉そのままに信じています 夜叉の裏顔


2019-038:祖(酒害体験) 祖神(おやがみ)の草に埋もれて守りいる無常の風に思い重ねる

2019-039:すべて(酒害体験) ふつふつと五月の微熱騒ぎ出す前頭葉の皺のすべてが


2019-040:染(酒害体験) わが心(むね)を染めつつ朝のひかり生(あ)る唐八景の芝のささめき

2019-041:妥(酒害体験) あなたへの思いに妥協したくないラインじゃ匂い送れないから


2019-042:人気(酒害体験) さきくさのなかに隠(こも)れる山神の人気なき径石の苔むす

2019-043:沢(酒害体験) いくつもの無名の沢を渡りゆく宮摺までのやまなかのみち


2019-044:昔(酒害体験) 何度でも何度でも聞くお袋のたどたどしくも息づく昔


2019-045:値(酒害体験) 一円の値打ちのなかに秘められる未来志向という名の坩堝(るつぼ)

2019-046:かわいそう(酒害体験) ひとりぼちかわいそうだと思うまい酒害に疲れた母子を想う

2019-047:団(酒害体験) 地団駄を踏んで仏の顔ひとつ三枚舌を持てぬ島国


2019-048:池(酒害体験) 古池の葦も魚も骸骨も埋めて築いた家に住む人


2019-049:エプロン(酒害体験) エプロンをはずし忘れる人だから君が楽しいなんとはなしに

2019-050:幹(酒害体験) 天翔けてあなたをはっしと抱きたい聳える幹の樹液浴びつつ


2019-051:貼(酒害体験) 下垂する瞼のテープ貼り直す短歌にのめり込む真夜の淵


2019-052:そば(酒害体験) とりあえず出社の前にそば啜る習い懐かし野田の立ち喰い


2019-053:津(酒害体験) 口之津の玉峯禅寺観世音 西望翁の心奧の声


2019-054:興奮(酒害体験) 愛してないわ ただ興奮が冷めただけ孕んで酒を止めた暮らしに

2019-055:椀(酒害体験) 汁椀のふちに欠けあり唇の触らぬように確かめる朝


2019-056:通(酒害体験) 形骸に遊ぶか月の裏灼けて光も見えず通り一遍


2019-057:カバー(酒害体験) にっぽんの浜辺すべてをカバーする禁酒法案国が定めよ


2019-058:如(酒害体験) 如何せんアル中やから嗜まぬ早寝早起き朝露を踏む


2019-059:際(酒害体験) 文字ひとつ心の際にうずくまる耳にまぼろし風の切岸


2019-060:弘(酒害体験) 弘法はひとりの人の名ではない曲がり指立て飲む昔から


2019-061:消費(酒害体験) 命など朝な夕なのひとしずく消費を惜しめ阿から吽まで


2019-062:曙(酒害体験) それぞれの曙それぞれの季節風振り切って今日を始める


2019-063:慈(酒害体験) 忘却の滋訓の外に明け暮らす愛河の岸を彷徨うままに


2019-064:よいしょ(酒害体験) いつの間によいしょと声を合わせてる公園わきの九十五段

2019-065:邦(酒害体験) 合邦の付けを令和に払わせる韓半島を癒やす試み


2019-066:珍(酒害体験) ありふれている風景の外(と)に内に珍しいもの出会いを探る


2019-067:アイス(酒害体験) もしかしてアイスクリーム梓弓返る時代の先にあるもの


2019-068:薄(酒害体験) 夕月夜(ゆふづくよ)入る間ことの葉さ乱れてこぞの薄を踏むや野風の

2019-069:途(酒害体験) 抗酒剤疑いながら酒を飲む断酒途上の事実をひとつ


2019-070:到(酒害体験) とき到るもう見返りを求めない歓びだけを求めてゆこう


2019-071:名残り(酒害体験) みよ そこに確かにそれは息づいてドゥイノの館名残りの墓標

2019-072:雄(酒害体験) 愛欲の雌雄もとより一系を軽んずべからざるとは云へど


2019-073:穂(酒害体験) 娑婆世界心の継ぎ穂あればこそ散骨好けれ花を一輪


2019-074:ローマ(酒害体験) 長崎の町はローマに献げらる異教徒拒む壁のありけり


2019-075:便(酒害体験) 便利さの中に潜める落とし穴文明の果て何が待つのか


2019-076:愉(酒害体験) 愉しみは夜に取り置くお勤めを済ませてまずは夕餉の支度


2019-077:もちろん(酒害体験) 愛国で現状批判うた詠みの矜持もちろん独り善がりの


2019-078:包(酒害体験) 包まれていたいと思う愛すれば手もつなぎたいキスもしたいと


2019-079:徳(酒害体験) 徳あれば褒めよと経に書いてある般若の中の愛語というは


2019-080:センチ(酒害体験) おセンチな君と云っても通じない女子高生に鼻で嗤われ


2019-081:暮(酒害体験) 夏座敷けだるいままに暮れてゆくSNSに時を忘れる


2019-082:米(酒害体験) 米櫃の無い暮らしぶりなんとなく切り離された小舟みたいだ


2019-083:風呂(酒害体験) ここに来て風呂に浸かった記憶無しガス水道を切り詰めている

2019-084:郵(酒害体験) 不審者の多いと教える人が居て郵便受けを常にまさぐる


2019-085:跳(酒害体験) 跳躍を期して力を貯めているもうすぐそこに明日が見える


2019-086:給料(酒害体験) 平成の初めに比べ給料の額は違えど同じ小遣い


2019-087:豊(酒害体験) 豊満な躰もいいがそれよりも肌理の細かさそれこそ命


2019-088:喩(酒害体験) あのひとを喩えて云えば平成の晶子と思う愛をうたえば


2019-089:麺(酒害体験) 素麺が一番だよと口癖に母はのたまう四季それぞれに


2019-090:まったく(酒害体験) まったくのとばっちりだと云いたげに西から東梅雨前線


2019-091:慎(酒害体験) 慎んでことばを選ぶfbの不毛な会話ひとに頼るな


2019-092:約束(酒害体験) 約束を忘れた訳やないなんてどの口が言う仕事も行かず


2019-093:駐(酒害体験) なつぞらにぽっかり空いた駐車場トラック錆びてプレートも無く

2019-094:悟(酒害体験) 熱に浮かされ悟ったような顔をしてひとの話に茶々を入れるな


2019-095:世間(酒害体験) 得得と世間話にからませてあなたの気持ちわかる気がする


2019-096:撫(酒害体験)  撫でながら肌のざわめく哀しみをひしと抱いていざ夜の歌


2019-097:怨(酒害体験)  怨まれて恨むことなど忘却の穢土に死しても第五楽章


2019-098:萎(酒害体験)  どうしても湘子の俳句目に浮かぶ四肢萎ゆるとはもがいての句か

2019-099:隙(酒害体験) 青蔦がひさしと壁の隙間からにうと浮かんで風に吹かれる


2019-100:皆(酒害体験) あの日には泥鰌でしたよ魂を救う手立ては皆目なくて



◎ なんとか完走したわけですが、順繰りに投稿しなければならないし、あとから訂正するにはルールが決められていますので、推敲を放棄した歌も多々あります。期間は2019年2月から11月末日まででした。

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