雑感三首 [短歌]
昨夜 風呂場の排水口を掃除しようと蓋を開けてみると なんか様子が変なのである。黒い、あまりにも黒すぎる。懐中電灯を持ってきて よ~く見ると なんと!塩ビ管の周りの水受けの部分が腐食して抜け落ちているではないか。盛り上がった土やら釘やらが見えるのだ。さても夜中に大家さんを叩き起こすほどでもあるまいと、今朝、連絡したところ、飛んできて確認しながら「どうやって塞ぐか」と写真を撮りながら、金のかかる工事のことなんか端から考えてない。工事業者に聞いたのか、昼過ぎに再びやってきて小石を詰めだすじゃないか! 聞くと 水中ボンドで塞ぐと言う。なるほど・・と思う間もなく15分ほどで完了。今日はシャワーは無しですよ‥と言い残して帰っていった。「滅多にあることじゃないですな‥」と云いながらも、なんとも 呆っ気ない話ではある。
大家さんが帰ってしばらくすると 「狐の嫁入り」かと思えるようなひなた雨が降り始めた。と思いきや急に雨脚が強くなり 瞬く間に視界は真っ白・・・。見ると青空は消えていた。 10分ほどのミニ・ゲリラ豪雨であったのだが、止んだ後に残っていたのはむせ返るような土の臭いと熱気である。それから例によって、点滴に通院。全開放で落とすので40分ほどで終了、帰宅。思い立って家具の配置換えに取り掛かって気が付けば夜になっていた。
雑感を三首ほどひねり出す。
歩くたび躰の塵が剝がれ落ちいつでもそれを拾ってしまう
思い立ち家具の配置を変えてみる母の血筋が濃くわれにある
野良の雄ブロック塀の片陰に段を枕に腹をそよがせ
ラジオから「見上げてごらん 夜の星を~(^^♪ 」が聞こえてきた。そろそろお経を読むには制限時間いっぱいだ。
やっと夏になったのに [川柳]
やっと夏になったというのに、あと10日もすれば暦(旧暦)では立秋となり 残暑お見舞いなどと書かないといけなくなる。それは否応もなく長崎の被爆の記憶を思い起こすことになる。慰霊の日などと云われるが、市民・・いいえ人類にとって2度と忘れてはならない怒りの原点なのです。無謀な戦争に走った自国の為政者への恨みより、核爆弾を投下したアメリカ合衆国への憤りより・・この過去をいまだに容認している「多数派」を優先する選民思想を胚胎しているかもしれないことを告白しなければならない やり場のない哀しみ。なんという悲喜劇。ヒバクシャの血脈をつなぐ一人として繰り返し詠っていくことになるだろう。
新涼の朝 爆心地静まらず
真実を知らない人のツーショット
骸(むくろ)焼く臭いと煙あちこちに
語り部の火球のあとの黒い雨
校庭に骸重ねて焼く記憶
たましいの這い出る隙もない地獄
ヒバクシャの記憶すべてを受け容れる
血の中にヒバクシャの怒り哀しみ
どこまでも続く皮膚熔け肘を曲げ
火を見つめ背のおとうとは死んでいる
外つ国のひと賑わっている長崎忌
NHKの番組が語るような・・あの少年の足で日見のトンネルを抜け矢上に行ったなんて信じられないと91歳の母は言う。時津の方へ行ったのではないか‥と。それほど、被爆後の市街地は焦土化していたし、強制疎開に遭った街区や学校の校庭など・・空地のいたるところで腐敗し始めた屍を焼く異臭が充満していた・・と。
現在時点での推測で調査することの困難さを思い知る。証言はヒバクシャの死とともに記録されない限り消えてゆく運命にある。ヒバクシャの遺骸を焼いた場所が今は緑の中であれば問題にもなるまいが、住居であれば果たしてどうであろう・・。慰霊の塔の一つも建てるだろうか‥? 現実はそれほど甘くはない。おそらく忌避の場所としてクチコミのなかに留められるだろう・・。
蝉の声 あの日も街に満ちていた
青空の中に閃光 きのこ雲
遠ざかる銀の翼を誰も見ず
侵略のツケを払った無辜の民
慰霊の日なぜ天皇は来ないのか
象徴の立場 政治を嫌うのさ