持ち時間(20句連作) [川柳]
県文芸の応募作です。投稿してずいぶんになるし、締め切りからも20日以上経つので、こちらに掲げてもいいかと思いまして・・・「余生」などとはとてもではありませんが、云える齢と思っていませんので「持ち時間」としました。
巻きついた枷をほどいて荷を下ろす
歯車を切り換えながら歩きだす
カタルシス覚めた目で見る半世紀
ももしかも百歳という持ち時間
一切は途上そのもの春返る
はみだしてゆくDNAに導かれ
螺旋階段目の前で消えてゆく
持ち時間何を拾うか面白い
羅針盤狂いだしても楽天家
平等に万人の手に今がある
若さとは今を感じる心持ち
しなやかに惑う心が融けてゆく
身に残る棘を抜いては捨ててゆく
今はまだ旅の白衣に用はない
ゆきずりの恋わが持ち時間待ったなし
古希にまだ手が届かない深呼吸
後期高齢まだ見ぬ世界待っている
みな違う老いという名の風まかせ
持ち時間フル活用のピンコロリ
生臭い海泳いでる泳いでる
実感は実感なのだけれども、恐らくこれは撥ねられるに違いありません。自由題とはいえ、テーマが大きすぎたのかもしれません。もっと練るべきだったかな?・・と今にして思います。
立秋以後 [俳句]
梅雨が果てて 炎天がすさまじかったのに、暦は秋を告げる。今日なんかようやっと その気配が寄ってきたのだが。しばらくブログから遠ざかっていたので、晩夏の気分を思い起こしたくてノートを読み返してみた。
真夜更けて麦茶すすれば はずく啼く
一服のマッチ擦るとき火蛾の舞ふ
雨白く夏の色消す夕まぐれ
二句目は19日付の長崎新聞の俳壇に採用されました、運よく・・。小さな白っぽい蛾でしたけど、火に飛びこむ蛾のイメージに変えてみました。立秋のあとの句を並べます。残暑と云うよりも真夏の気分が強かったので季語は夏のものです。
昼寝覚 波の音聞く岩の陰
輪郭の際だつ雲や草田男忌
熱帯夜 猫の寝息と星明り
※草田男忌・・中村草田男の忌日 1983-8-5 人間探求派の一人と称され、芸と文学の融合を提唱。
秋暑し岩肌ぬれて蝶憩ふ
ひぐらしを聞いて南無なむ経を読む
濃緑(こみどり)の闇に分け入る初嵐
秋の雨ほつとひと息街の昼
ひぐらしの止むとき波の音しづか
脛なでる見えない風と虫の声