近詠 2020.06前半 [俳句]
① 節くれが鯵の皮引く夕日かな
② 黒南風やわづかに見留むけものみち
③ 切岸の花合歓月にさやぎけり
④ 透きとほるみちの果なる雲の峰
⑤ 山の端の食はるるままに五月闇
⑥ ががんぼや玻璃のうへなる仁王の手
⑦ 結ぼほる夢より覚めて桜桃忌
⑧ 物いはぬ草に言問ふ喜雨の色
⑨ 梅の実の熟るるやをさなつまの声
⑩ 谷越ゆるみちすんすんと夏燕
⑪ 風透きとほる蜘蛛の囲の浄土かな
⑫ 麦の秋風アル中の目に涙
⑬ 雲立つや黙(もだ)のうちなる蝉しぐれ
⑭ 長崎忌みなと煮えたる記憶持つ
⑮ 灼(や)かれても見よふるさとの風の中
⑯ やまももの黒き落つるや雨の歌
⑰ 梅の実の熟れて紅きをしやぶりけり
⑱ 梅雨入り(ついり)かな 世紀刻めるをんな棲む