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「躁」になってからの短歌 2018・10月末からクリスマス・イヴまで [短歌]

☆私には双極性感情障害という厄介な病気があります。気分が周期的に変調をもたらすもので、自分では何とも対処に困る状態に置かれます。精神薬で調整はしているのですが、万能であるはずもなく、『躁』の時期が2018年10月末くらいから2019年1月末くらいまで続きました。それが終息すると『鬱』へとなだらかに移ってゆくことになり、心は平静を取り戻します。



うらうらと小春日われにさりげなく 五万送れとサイトの脅し


草だけが割れ目に根づき生きている 排水溝に秋の雨降る


疎まれて看取る者さえ居ないとは 酒歴語った人今は亡し


海峡を越えてきたのか冬の雨 真夜の瓦を叩く音聞く


山間(やまあい)に灯ほのか温かい 人の営み歴史の吐息


涙腺のゆるんでひとり口ずさむ そは あの時の惜別の歌


手に余る暇と孤独に傷ついて アンモナイトの夢に寄り添う


夕焼に裸をさらす桜木の枝に重ねる 春への思い


いちどだけ隣り合わせの危うさを心に許す その出会い系


追いかけてみたいと思う 背を向ける影踏み抱いてみたいと思う


北の棘呼びこむ雲に包まれて 季節はずれの風にやわらぐ


引き潮の跡を踏みつけ雨雲のたゆたう水際 砂掬う昼


ありのままことばは透けてしまってる タバコを溝に投げる曇天


出会い系見果てぬ夢の中に居て恋の予感に狼狽えている


有り金をつぎ込んでいる月曜日 電車通りの煙草屋に寄る


輪の中に何があるのか戸を叩く 信じあいたい友を求める


逃げ水のような女であるらしい 雲はたちまち氷の粒へ


ひとかけらちぎってくれる掌に豆粒大のつぶれた甘味


午後の日が桜の枝にさんざめく 足にまとわる猫の喉声


北の窓指折りながらジャズを聴く真夜の風には雪の匂いが


古傷の仕事の臭う衝迫にだまされてみる価値はあるのか


ほのぼのと午後の日動く傍らを野良の猫ゆく一匹二匹


寂しがり熱きを避けて暗がりのベッドの下に猫は腹這う


寝転がる猫の背中に手をやれば腹の上下が指に伝わる


あまりにも男のエゴがうとましい 自転車押して遠回りする


寂しさに負けぬ路傍の草となる これ見よがしにクレカかざされ


感情の裂け目に君は蹲る クレカは僕に遠い存在


ごみ箱に捨てた未練を確かめつ 押しつけられたメールを削除


なづき野の藪をかき分け拾いだす まだ温かい母の昭和史


裏窓の結露に気づく 真昼間の街にかぶさる厭戦気分


真夜中にアルトサックス絡みつく 私を捨てる君の微笑み


まだ凍る夜のとばりの薄氷を裂いて心を解いてあげたい


眩しくて顔をそむけることもある 人間だもの酔っぱらっても


瞬く間よぎる思いにとらわれて時間旅行を楽しんでいる


間もなく朝の駅に着きます 案内の声は静かに耳にしみ入る


まだ遠い遠い しがらみの中手探りに絆もとめる人の距離感

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