春待ちの句抄


01.冬の蠅壊れかけゆく人の影


02.思ひ込み始めるベルや草城忌


03.春の雲ひとりで生くる是非を問ふ


04.水餅や雪うっすらと積もりけり


05.春隣 机の向きを変えてゐる


06.茶を啜る三寒四温夢の中


07.バラの棘 六十路の半ば過ぎにけり


08.ゆくりとも君の面影 冬日和


09.憧れは冬青空といふ奈落


10.空っ風さう読ませたく鶏揚げて


11.時雨るとき天地一色こころ消ゆ


12.温石を抱いて眠る夜明け前


13.舞ひ上がる苦しみの果て鰯挿す


14.柊の枝も無いのに厄払ひ


15.はや咲きの梅醸せるや年の明け


16.春を待つ雀の子等や花の岸 (・・・季重なりの失敗作 )


17.落下傘待ちくたびれて蛇苺


18.梟の夢や狩場の成れの果て


19.鼻水を啜って夜の舞踏会